1.概要
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が高い状態が継続する疾患のことです。
尿酸が過剰になると体内で結晶を作り、痛風発作を発症することがあります。尿酸の結晶は足の親指の付け根に形成されることが多く、激烈な痛みや発赤、腫れなどの関節炎を引き起こします。腎臓にも結晶を作ることもあり、腎臓結石の原因にもなります。
高尿酸血症はアルコールや肉を多く摂取するなど生活習慣と密接に関連していると言われています。こうした生活スタイルは、高血圧や脂質異常症、糖尿病、肥満などとも関連しており、動脈硬化を進行させないという観点からも治療が必要です。
2.原因
高尿酸血症の原因は、(1)腎臓からの排泄低下、(2)尿酸の産生増加、(3)排出低下と産生増加の混合型に分けられます。
(1)腎臓からの排泄低下
日本人にもっとも多いタイプです。尿酸を腎臓から十分に排出できないために高尿酸血症を生じます。腎機能が低下していたり、尿酸の排出に関与する利尿薬などの薬剤を使用していたりする場合には尿酸値が上昇しやすくなります。
内臓脂肪型肥満ではインスリン抵抗性を介して腎臓からの尿酸排泄が低下するため尿酸値が上昇しやすくなります。また、尿酸の産生も高まるといわれています。
他にも、乳酸が体内に過剰に存在すると尿酸排出を阻害します。アルコール摂取によって肝臓でのプリン体の代謝過程で乳酸が産生されます。このように、アルコール摂取は尿酸の増加と排出低下が生じるため注意が必要です。
(2)尿酸の産生増加
尿酸が過剰に産生されることでも高尿酸血症を生じます。溶血性貧血、白血病、リンパ腫といった血液疾患や乾癬などの炎症性疾患が原因となります。これらの疾患では核酸代謝が活発となり、老廃物として尿酸を大量に産生する傾向があります。
また、尿酸のもととなるプリン体を大量に摂取することも高尿酸血症の原因になりえます。プリン体は、ビールやレバー類などに多く含まれています。したがって、こうしたものを多く摂取する生活習慣スタイルは高尿酸血症の原因となります。
遺伝的要因として尿酸の排出に関わるABCG2遺伝子の変異が発症リスクを上昇させるという報告もあります。ABCG2の機能が低下すると腸管からの尿酸の排泄が低下するため尿酸値が上昇しやすくなります。
3.症状
高尿酸血症そのものでは症状は生じません。しかし、高尿酸血症に関連して痛風や腎臓・尿管結石を発症すると自覚症状が現れます。
痛風発作は足の親指の付け根など小さい関節に生じることが多く、激烈な痛みや発赤、熱感、腫脹といった症状が出現します。くるぶし、膝、アキレス腱などにも起こることがあります。通常は数日で治まりますが、高尿酸血症に対して適切な治療が行われないままにすると何度も発作を繰り返す可能性があります。さらに関節の変形や運動制限などにつながることもあります。
また、痛風結節と呼ばれる黄色っぽく固いできものをみることもあります。指、手、アキレス腱周囲などが好発部位ですが、腎臓など内臓に形成されることもあります。通常は痛みなどありませんが、関節の変形につながったりすることもあります。
高尿酸血症が持続すると腎臓に結石が出現することもあります。尿管結石症の原因になる場合や、腎障害が進行することもあります。高血圧や脂質異常症、肥満、糖尿病などの生活習慣病を合併することも多くあります。
4.検査・診断
高尿酸血症の診断は、血液検査で尿酸値が高いことによってなされます。一般的には尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断されます。
痛風発作では尿酸の結晶が形成されていることを確認するために、関節穿刺や関節超音波検査、特殊なCTなどを行うことがあります。また、腎臓・尿管結石の確認のために尿検査や超音波検査、CTなどといった画像検査が行われることもあります。
また、感染性関節炎や偽痛風、関節リウマチ、骨折など痛風に類似した症状をきたす疾患との鑑別を行うために、それらをスクリーニングする血液検査や画像検査などが併用されることもあります。
5.治療
高尿酸血症の治療は生活習慣の改善と薬物療法とに分けることができます。また、痛風発作に対しては非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が使われます。
(1)生活習慣の改善
プリン体を多く含む食品やアルコールの摂取を控えることが重要です。プリン体を多く含む食品にはビール、レバー、肉、魚などが挙げられます。また、肥満を併発している場合には減量も求められます。
(2)薬物療法
食事や運動といった生活習慣の改善でも十分に尿酸値の低下が見られない場合、薬物療法を行います。尿酸産生を抑制する薬や尿酸排泄を促進する薬などを使用することになりますが、尿酸降下薬の開始時には痛風発作が生じることもあるため注意が必要です。なお、痛風発作の出現時にはNSAIDsを使用します。