健康診断で血圧を指摘された方へ — 家庭血圧の測り方と受診の目安

職場や自治体の健康診断で「血圧が高め」「要再検査」と指摘された方から、日下診療所にも日々ご相談をいただきます。この記事では、受診前に行っていただきたい「家庭血圧の測定」について、日本高血圧学会のガイドラインに沿って解説します。

なぜ家庭血圧が重要なのか

血圧を評価するときは、診察室で測った値だけでなく、家庭で測った記録も参考にします。家庭と診察室で血圧が異なることがあるため、測定結果を医師に見せて相談しましょう。

理由は大きく 2 つあります。

1 つ目は「白衣高血圧」です。医療機関で血圧を測ると緊張で値が上がる方が一定数おられ、診察室血圧だけで判断すると、本来は正常な方が高血圧と診断されるリスクがあります。

2 つ目は「仮面高血圧」です。診察室での血圧が正常でも、家庭や職場では血圧が高いことがあります。診察室での測定だけでは見逃されることがあるため、家庭で測った記録を医師に見せて評価を受けましょう。

つまり、健康診断で血圧を指摘された時点で「診察室での一度だけの測定値」で判断するのではなく、まずご自宅での測定データを集めることが、正確な診断への近道です。

家庭血圧計の選び方

家庭血圧計は、上腕で測るカフ式の血圧計を選んでください。手首式や指式は簡便ですが、測定誤差が大きく、高血圧学会も上腕式を推奨しています。

購入時のチェックポイントは以下の 3 つです。

  • 国内で医療機器として承認または認証を受けた製品であることを、製品の表示や添付文書で確認できるもの
  • カフ(腕に巻く部分)が自分の腕の太さに合うサイズ
  • 測定値が自動でメモリに保存されるタイプ(記録が楽になります)

価格帯は 3,000〜10,000 円程度が一般的です。メモリ機能付きで Bluetooth でスマホと連携できるタイプも便利ですが、必須ではありません。紙のノートでも十分記録できます。

正しい測定のタイミング

家庭血圧は「朝と晩、それぞれ 2 回ずつ」測定するのが基本です。

朝の測定

  • 起床後 1 時間以内
  • 排尿を済ませた後
  • 朝食と服薬の前
  • 座って 1〜2 分安静にしてから測定

朝の血圧は「早朝高血圧」の発見に重要です。早朝は心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中)が最も起こりやすい時間帯であり、この時間帯の血圧管理が最も重要とされています。

晩の測定

  • 就寝前
  • 入浴・飲酒・喫煙から最低 30 分空けた後
  • 座って 1〜2 分安静にしてから測定

共通の注意点

  • 1 回測ったら 1〜2 分おいて、同じ条件でもう 1 回測る(合計 2 回)
  • 2 回の値の平均を、その時点の血圧として記録する
  • 測定値は「都合の悪い値を除外しない」こと — 全て記録するのが原則

どれくらいの期間、記録すればよいか

家庭血圧の記録は、可能であれば 2 週間分をお持ちいただけると参考になります。すでに測定した記録がある方は、測れた分をお持ちください。記録をそろえるために受診を先延ばしにする必要はありません。

血圧計をお持ちでない方には、受診時に機種や測定方法をご案内します。測定する際は、測定値だけでなく、日時やそのときの状況も分かる範囲で記録しましょう。

受診の目安

健診で血圧の再検査や受診を勧められた場合は、結果票の案内に沿って医療機関へご相談ください。家庭で測った血圧が高い状態が続く場合や、測定結果・体調について気になることがある場合もご相談ください。家庭血圧の記録がそろうまで、相談を待つ必要はありません。

家庭と診察室で血圧が異なる場合も、数値だけで治療の要否を自己判断せず、測定値と経過を医師に確認しましょう。

突然の激しい頭痛、胸や背中の突然の激しい痛み、急な息苦しさ、ろれつが回らない、突然片方の手足に力が入らない、意識がはっきりしないなどの症状があるときは、血圧を測り直したり通常のWeb予約を待ったりせず、119番で救急車を要請してください。

受診当日にお持ちいただきたいもの

日下診療所で血圧のご相談を受ける際は、以下をお持ちください。

  • 健康診断の結果票(過去 2〜3 年分あるとなお良い)
  • 家庭血圧の記録(すでにある場合は、測れた分)
  • マイナンバーカード(マイナ保険証)または資格確認書
  • 現在服用中のお薬がある場合はお薬手帳

結果票と家庭血圧記録を見ながら、生活習慣・家族歴・他の数値(コレステロール・HbA1c・腎機能など)も含めて総合的に評価し、治療方針をご相談します。日下診療所では木村院長が高血圧専門医として、お一人おひとりの背景に合わせた治療設計を行っています。

薬を始めるかどうかは、一緒に決めていけること

「血圧が高いと言われたら、すぐ薬を飲むことになるのでは?」というご不安をよく伺いますが、必ずしもそうではありません。

軽度〜中等度の高血圧で、他の心血管リスク(糖尿病・脂質異常症・喫煙・家族歴など)が少ない方は、まず 1〜3 か月の生活習慣改善(減塩・運動・節酒・禁煙)から始めることもあります。家庭血圧を継続して記録しながら、改善が見られれば薬物療法は不要と判断できるケースもあります。

一方、すでに高血圧性の合併症(心肥大・たんぱく尿・網膜症など)がある方や、収縮期血圧が 160 mmHg を超える方は、早期からの薬物療法が推奨されます。

いずれの場合も、治療方針は一方的にお伝えするのではなく、ライフスタイル・仕事・ご家族のことを伺いながら、一緒に決めていきます。お忙しい方には、服薬回数の少ない薬の選択や、オンライン診療を組み合わせた通院負担の軽減もご提案しています。

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執筆・医学監修: 石田 和也(理事長)