疾患

禁煙外来の診療 — チャンピックス出荷再開・オンライン診療対応

日下診療所では、ニコチン依存症管理料による 12 週 5 回の保険診療を中心に、禁煙外来を行っています。2021 年以降出荷停止となっていた内服薬「チャンピックス(バレニクリン)」は 2025 年 10 月 30 日に通常出荷が再開され、日下診療所でも処方を再開しました。貼り薬「ニコチネル TTS」もあわせて、患者さまのご希望や生活状況(車の運転・皮膚の弱さなど)に応じて選択いただけます。2 回目以降の診察はオンライン診療でも対応しており、地域にお住まいの方の通院継続を無理なくサポートします。

監修: 石田 和也(理事長)公開日: 最終更新日:

日下診療所の禁煙外来

保険診療による 12 週 5 回のプログラム

ニコチン依存症管理料による標準的な禁煙治療プログラムを行っています。初回診察で喫煙状況の問診・呼気一酸化炭素濃度測定・禁煙補助薬の選択・禁煙開始日の決定を行い、2 週後・4 週後・8 週後・12 週後の計 5 回で治療を組み立てます。途中で脱落せずに 5 回すべて受診することが、禁煙継続率を高めるうえで重要であることが報告されています。

費用は 3 割負担の場合、薬代を含めて 12 週間合計で 13,000〜20,000 円程度が目安です(処方薬・診察回数により変動)。保険診療を受けるためには「過去 1 年間に保険での禁煙治療を受けていない」ことが条件となるため、前回治療から 1 年以上経過していない方は、次項の自費診療をご案内することがあります。

チャンピックス(2025 年 10 月出荷再開)とニコチネル TTS

禁煙補助薬は、内服薬「チャンピックス(一般名: バレニクリン)」と貼り薬「ニコチネル TTS」の 2 種類を保険で処方しています。チャンピックスは 2021 年 6 月に製造元のファイザー社が出荷停止となり長期にわたり処方できない状況が続いていましたが、製造工程の改良により 2025 年 10 月 30 日に通常出荷が再開されました。日下診療所でも再開後から順次処方を行っています。

チャンピックスは脳のニコチン受容体に部分的に作用することで禁煙時の離脱症状を和らげ、かつ万一喫煙した場合の満足感も抑える作用があります。ニコチネル TTS は皮膚から少量のニコチンを吸収させて離脱症状を和らげる貼り薬で、業務で車を運転される方や内服薬が合わない方に適しています。どちらを選ぶかは、生活状況・ご希望・既往歴を踏まえて医師と相談のうえ決定します。

オンライン診療で通院を続けやすく

2024 年 6 月の診療報酬改定以降、かかりつけ患者については、初回から最終回までのすべての診察をオンライン診療で完結できる運用が認められています。日下診療所では、初回を対面で行い 2 回目以降をオンラインで受ける組み合わせ、または既にかかりつけでいらっしゃる方であれば初回からオンラインで完結する形、いずれにも対応しています。

呼気一酸化炭素濃度測定は対面時のみ実施し、オンライン診察では問診による喫煙状況の確認と薬の調整、離脱症状への対処法の相談を行います。仕事の都合で平日の通院が難しい方でも、昼休みや終業後の短い時間に自宅から受診できるため、12 週間の治療を脱落せず続けやすくなります。

糖尿病・高血圧を併発している方への並行管理

喫煙は高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・心筋梗塞・脳卒中などの主要なリスク因子であり、これらの生活習慣病を治療中の方にとって禁煙は薬物治療と並ぶ重要な介入です。日下診療所では、木村院長(高血圧専門医)を中心に、内科専門医による診療体制で、禁煙外来と生活習慣病の外来を並行してフォローできる体制を整えています。

健康診断で血圧や血糖値の異常を指摘されたタイミングで禁煙を始めたい方、すでに内服治療中で次の一手として禁煙に取り組みたい方も、日下診療所で一貫した診療を受けていただけます。

禁煙外来についての基本情報

ニコチン依存症と禁煙治療の位置づけ

喫煙の継続はニコチン依存症という疾患として定義されています。ニコチンは脳内のニコチン受容体に結合してドーパミンを放出させ、一時的な満足感をもたらしますが、作用が切れるとイライラ・集中力低下・気分の落ち込み・頭痛などの離脱症状を引き起こします。この離脱症状を避けるために再び喫煙するというサイクルが繰り返されることで、喫煙が「意志の問題」ではなく「治療が必要な依存症」となります。

2006 年に保険診療「ニコチン依存症管理料」の算定が開始されて以降、禁煙は自己努力ではなく医療によって支援される対象となりました。2016 年には 35 歳未満の患者で喫煙本数・年数の要件が撤廃され、2020 年には加熱式たばこの使用者も保険適用の対象となっています。

保険適用の 4 要件

保険診療でニコチン依存症管理料を算定するためには、以下の 4 要件をすべて満たし、かつ過去 1 年間に保険での禁煙治療を受けていないことが必要です。

  • ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で 5 点以上(10 点満点)であり、ニコチン依存症と診断されること
  • 35 歳以上の方はブリンクマン指数(1 日の喫煙本数 × 喫煙年数)が 200 以上であること(35 歳未満は本数・年数の要件なし)
  • 直ちに禁煙することを希望していること
  • 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療の説明を受け、文書により同意すること

治療中の注意点と副作用

チャンピックスの代表的な副作用は吐き気・不眠・異常な夢などで、特に服用開始 1 週目に現れやすいことが知られています。通常は服用を続けるうちに軽減していきますが、強い症状があれば医師にご相談ください。また、まれに抑うつ・自殺念慮などの精神症状が報告されており、気分の変化があった場合も早めの受診が必要です。なお、服用中は自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けてください。

ニコチネル TTS の代表的な副作用は貼付部位の皮膚のかぶれ・かゆみ・不眠です。皮膚が弱い方は貼付部位を毎回変える、心筋梗塞発症後 3 ヶ月以内・不安定狭心症・重度の不整脈がある方はニコチネル TTS は使用できないなど、いくつかの注意点があります。治療中に万一喫煙してしまった場合でも、治療を中断せず次回診察でご相談ください。再び禁煙に挑戦することができます。

自費診療の選択肢について

保険診療の条件を満たさない方(過去 1 年以内に保険で禁煙治療を受けた方など)には、自費診療での禁煙治療もご案内できる場合があります。自費診療は保険診療と異なり治療スケジュールに制約がなく、初回からオンライン診療で完結できるなどの柔軟性がありますが、費用は全額自己負担となり、合計で数万円〜十数万円となることが一般的です。保険診療を優先したうえで、条件を満たさない場合に個別にご相談ください。

日下診療所での禁煙外来の特色

禁煙外来は、ニコチン依存症管理料による保険診療で12週5回の通院プログラムです。日下診療所では2023年10月の医承会グループ承継時より禁煙外来を開設し、働き盛り世代を中心に、長年タバコを続けてきた高齢の方まで、幅広く対応しています。日下診療所では、内科認定医・高血圧専門医の資格を持つ木村院長を中心とした内科専門医チームで、禁煙外来と高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病管理を並行してフォローできる体制を整えています。喫煙はこれら生活習慣病の重大なリスク因子ですので、禁煙と生活習慣病改善を同時に取り組むことで、心血管リスクを大きく下げられる可能性があります。

木村院長より

禁煙外来の診療で大切にしているのは、「失敗しても責めない」という姿勢です。喫煙はニコチン依存症という疾患であり、やめたくてもやめられない苦しさは病気の症状です。標準的な禁煙治療(バレニクリン・ニコチンパッチ)を活用しながら、患者さんのお気持ちや生活背景に合わせて伴走します。

途中で吸ってしまった場合も、それまでの努力は決して無駄になりません。「もう一度やり直したい」「何度目かの挑戦」という方も大歓迎です。お一人で頑張るより、医師と一緒に取り組んだほうが成功率が大きく上がります。タバコをやめたいと思った今が、一番のチャンスです。お気軽にご相談ください。

よくあるご質問

Q. 禁煙外来の費用はどのくらいかかりますか?

A. 保険診療(3 割負担)の場合、12 週間・計 5 回の診察と薬代をあわせて 13,000〜20,000 円程度が一般的な目安です。処方薬(チャンピックス・ニコチネル TTS)の種類や診察回数、初回が対面か情報通信機器を用いた診察かによって変動します。

なお、1 日 1 箱を喫煙する方の年間のたばこ代は 20 万円前後となるため、12 週間の治療費用は 1 ヶ月分のたばこ代程度であることが多いです。お住まいの市区町村によっては禁煙外来治療費の助成制度が利用できる場合がありますので、自治体窓口にご確認ください。

Q. すべての診察をオンラインで受けられますか?

A. 日下診療所をかかりつけとされている方については、厚生労働省の指針に沿って初回から最終回までのすべての診察をオンラインで完結する運用が可能です。かかりつけでない方の場合は、初回を対面で受診いただいたうえで、2 回目以降(2 週・4 週・8 週・12 週後)をオンラインで行うのが一般的な流れになります。

呼気一酸化炭素濃度測定は対面時のみ実施します。処方薬はオンライン診察後に院外薬局から受け取っていただきます(事前に処方せん送付先をご指定いただけます)。

Q. 飲み薬(チャンピックス)と貼り薬(ニコチネル TTS)、どちらを選ぶとよいですか?

A. 一般的にチャンピックスは離脱症状を和らげる作用と、万一喫煙した場合の満足感を抑える作用の両方を持ち、依存度の高い方に選ばれることが多い内服薬です。ニコチネル TTS は皮膚からニコチンを少量吸収させる貼り薬で、車の運転を業務で行う方(チャンピックスは服用中の運転を避けることが望ましい)や、内服薬の継続が難しい方に適しています。

皮膚のかぶれが心配な方はチャンピックス、精神疾患の治療歴がある方は慎重投与のためニコチネル TTS、というように背景によっても選択が変わります。初回診察時に生活状況・既往歴・ご希望を伺い、医師と相談のうえ決定します。

Q. 治療の途中でタバコを吸ってしまったら、保険診療は続けられますか?

A. 治療中の喫煙は珍しくなく、吸ってしまったことを理由に保険診療が打ち切られることはありません。次回の診察で喫煙状況を正直にお伝えいただき、薬の調整や対処法の相談を行うことで、そのまま治療を継続できます。途中で受診をやめてしまうことの方が、禁煙継続率を大きく下げることが報告されています。

12 週のプログラムをいったん完了したあと、再喫煙してしまった場合でも、前回の保険診療から 1 年が経過していれば再び保険で治療を受けることが可能です。何度でも挑戦できる治療ですので、うまくいかなかった経験がある方もあらためてご相談ください。

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参考文献

  1. 日本循環器学会・日本肺癌学会・日本癌学会・日本呼吸器学会「禁煙治療のための標準手順書 第 8.1 版」 日本循環器学会, 2021 [Link]
  2. 厚生労働省「e-ヘルスネット「禁煙治療ってどんなもの?」(健康日本 21 アクション支援システム)」 厚生労働省, 2023 [Link]
  3. ファイザー株式会社「チャンピックス錠 出荷再開のご案内(2025 年 10 月 30 日通常出荷再開)」 ファイザーメディカルインフォメーション, 2025 [Link]
  4. Haleon ジャパン「ニコチネル TTS30/TTS20/TTS10 添付文書」 Haleon ジャパン, 2024